Knowledge of Painting 塗料の知識

1.ゴミブツ撲滅作戦

塗装ラインでのゴミブツ不良対策・撲滅作戦の事前準備から調査方法、具体的な対策についての進め方等、多くの塗装ラインでの実績があります。

(1)ブツ不良の実態

  • ①検査不良率データ → 各項目内訳(ブツ、はじき、スケ、・・・・・・・・・)
  • ②ブツ不良の規格 → 大きさ、分布、高さ、部位別差別
  • ③塗料材料別ブツ発生率(工程、メーカー詳細)
  • ④塗料材質、塗料工程別ブツ発生率
  • ⑤ワーク部材種とブツ発生率
    <塗色別、工程別、ワーク別にブツの偏りがないか>

(2)ライン構成とワークの流れ

  • ①ワーク成型から塗装ラインへの投入期間
  • ②ワーク成型から塗装ラインへの持ち込み方法
  • ③ワークの下処理方法
    ブラスト処理/化成処理/除塵方法
    <下地の持ち込みブツはないか>
  • ④プライマー~中塗り~上塗りの塗装工程
    塗装タイム、塗装時間と塗装間隔、塗装機構成
    コンベアスピード、タクトピッチ、膜厚、マシーン種、コンペア方式
    霧化圧、回転数、ガンスピード、ガン距離・・・・・・・・・
  • ⑤塗装状態
    霧化状態 → ダストの飛散 → ブース内汚染状況
  • ⑥ライン全体レイアウト入手
    <塗装ブース周辺でブツを発生させたり、呼び込んだりしていないか>

(3)ライン環境

  • ①ライン各工程の温湿度と管理方法
  • ②ライン各工程の風速と管理方法
    <ライン環境でブツを浮遊させていないか>
  • ③検査工程の人員、検査環境(照度)、検出方法
    <ブツの見落としや検査のバラツキはないか>

(4)ラインでのブツ削減対応状況

  • ①ブース内粘着ワニスの有無
  • ②作業者の服装管理
  • ③湿度確保のための対応
  • ④ブース周辺供給エアーの管理方法
  • ⑤下地ワーク持ち込みブツの管理方法
    などすでに実施していることとその管理方法(頻度)
    <管理不足のため効果を発揮していない対策はないか>

(5)塗料管理

  • ①塗料供給方式
    ポンプ種、サーキュレーション規模、配管材質、ろ過機能
    撹拌方法と基準、液温
  • ②メンテナンス期間
    洗浄期間、洗浄方法、色変え頻度
  • ③調合時の管理
    希釈率、粘度測定方法、ろ過方法
    <塗料に原因はないか>

ゴミブツ発生原因の対策と特製要因図

2.塗膜ハジキ・へこみ対策

塗膜の欠陥の中でハジキとへこみは比較的多くのラインで発生します。最も対策が困難な欠陥の1つでもありますが、種類・原因・対処への考え方および対策を解説します。

ハジキとへこみは外観が似ていて、多くの場合原因が同じです。ハジキは下地まで達するくぼみで、へこみは下地に達しないくぼみです。この現象は被塗物表面で生じ外観が円形のものと不定形のものがあります。

形態 ハジキの
種類
原因 対策
(1)円形
(A)環境
ハジキ
塗装環境から飛来したシリコーン油ミスト等塗料よりも表面張力が小さい油滴、または塗料が濡れない固体粒子が未硬化塗膜に付着して起こる。 このタイプのハジキには、塗料の表面張力を下げること、環境の中にあるハジキの原因である塵挨やミスト(例:シリコーン油、機械油、他塗料ミスト等)が被塗物表面に付着したり、塗料を汚染するのを防止することが有効である。
(B)自己
ハジキ
塗料に内在する塗料よりも小さい物質が、微少な液滴あるいは粒子として未硬化塗膜の上に浮上して起こる。 はじく恐れのない添加剤を使用する。
塗料の粘弾性を調整することも有効である。
(2)不定形
(C)濡れ
ハジキ
表面張力が小さい物質による汚染で、下地表面にムラがある場合に起こる。 塗装前処理を十分に行い被塗物を清浄にすることが有効である。
現象によっては、ウエスでの拭き取り、サンドペーバーで表面を軽く研磨する程度でも対策できることもある。

3.色むら・色違い

現象 欠陥名 原因 対策
塗膜の色が部分によって異なる 色むら 塗料中の顔料が凝集している時に、塗装時のせん断応力のばらつきで、塗布した膜に色分かれが発生する。
また、顔料の着色力は分散粒子径により異なるので、塗装時の応力の掛り方で色味が異なる。
顔料を安定して分散し、凝集を起こさせないようにする。
せん断力は塗装方法により異なるので刷毛、ローラー、スプレー等異なる方法の組み合わせで同一個所を塗装しない。
塗膜の色が浮きまだらで色ムラになる 浮きまだら 不均一な溶剤蒸発が起こる塗膜では、表面の温度や表面張力が異なるため、塗膜内部で渦巻き対流が発生する。
塗料中の顔料も同様に対流するため顔料の種類の差で分離し、塗膜表面に色むらが発生する。
添加剤で界面活性能を持つものを添加する。
溶剤型塗料ではシリコーン油、シリコーン油と有機樹脂の共重合物を添加すると効果的である。

4.わき

現象 原因 対策
塗膜の表面に泡の抜け後が残って噴火口状の突起ぶつが塗膜に残る わきは塗膜に侵入した泡が塗膜外に抜けにくく、塗膜のレベリング性も不十分なため起きる。
原因の泡は加熱乾燥時の溶剤の突沸、塗装時に巻き込まれた空気、下地に含まれていた空気が塗膜に移行する等である。
多量の溶剤分を含んだまま塗膜の粘度が上昇すると溶剤の上層への移行ができずに加熱乾燥時に突沸してわきになる。
  • (1)シンナーの選択:焼付乾燥時に硬化が進み塗膜の増粘が始まる前に溶剤が抜けるようにシンナー蒸発速度のバランスを取る。
  • (2)焼付時の急激な昇温を避ける。
  • (3)塗膜の溶融粘度を下げるために、少量の高沸点溶剤を添加する。
  • (4)スプレー時の泡巻き込みが多い時は、粘度を下げたり、適当な消泡剤を添加する。
  • (5)下地の気孔からの泡は低粘度で浸透性の良い塗料を前処理的に塗布するのが有効である。コンクリート・モルタルへのシーラーコート、ジンクリッチペイント塗膜上へのミストコート等。

5.塗膜の剥がれ

現象 原因 対策
塗膜の付着が悪く、塗膜の一部あるいは全部が剥がれる
塗膜の各層間の場合と、被塗物素地からの場合とがある
  • (1)被塗物表面が油・水などで汚染されている場合。塗料の塗れ障害によって剥がれる。
    浮き錆等が表面に残っていて脆弱槽内で剥がれる。
  • (2)前工程で塗られた塗膜が硬化不足の場合、上から塗布した塗料の溶剤によって下の塗膜が膨潤・溶解して剥がれる。
  • (3)加熱乾燥型の場合、指定の乾燥時間を超えて過度に高温や長時間乾燥した場合。
  • (4)エポキシ樹脂塗料やフタル酸塗料などの常温乾燥型塗料で塗装後過度に放置したり、強制乾燥を過度にした場合、表面が硬くなり過ぎて、その上に塗布した塗膜が付着阻害で剥離する。
  • (1)塗装仕様書に示された脱脂・除錆等の前処理を確実に行うことが肝要である。
  • (2)この現象はリフティングと呼ばれる。
    常温乾燥型塗料で起こり易く、この現象が起きないよう仕様書に示す塗り重ねまでの時間で作業する。
  • (3)この現象は塗膜の架橋が進行しすぎたために起こると考えられる。併せて、オーバーベークや長時間の放置で塗膜が酸化、あるいは光劣化して泥弱層表面が形成されるため剥がれ易くなるものと考えられる。
    現実的な対策として表面をサンドペーパーで軽く研磨する、あるいは溶剤でワイピングすることで付着性は改善できる例が多い。
    いずれにしても過度の硬化を発生させないように塗装仕様書条件で作業をすすめる。

6.塗膜の割れ

現象 原因 対策
塗膜に不規則な割れが発生する
割れは表層だけ(浅割れ)と下層まで及ぶ場合(深割れ)がある
軟質の下層の上に硬質の塗装をした場合、上層の乾燥時に生じる収縮応力で割れが発生する。
下層が十分乾燥していない時に上層を塗装すると、上層の塗料溶剤が下層に移行して上層同様の割れを生じる場合、割れの応力が大きいと下層まで及んで深割れとなる。
塗装後早期による割れは、塗膜構成や塗装作業による場合が多い
割れが発生すると修復することができない場合が多く塗り替えが必要になる。
割れが発生しない塗装工程の設計(仕様書の確立)と工程管理が必要である。