塗装前処理

塗装の目的を達成するためには、塗膜が被塗物表面にしっかりと付着し、かつ平滑で緻密であることが必要です。被塗物表面が汚染していたり、脆弱な層があったりすると、十分な付着力が得られません。また、被塗物の表面に凸凹があると、これを平滑にしないと美観のある平滑面が得られません。塗装前処理はこれらの問題点解決のために行われます。
ここでは、工業的に多く用いられる金属の表面状態と塗装前処理剤(金属洗浄剤・除錆剤・化成処理剤)について説明します。

1.金属の表面状態

大気中ではほとんどの金属が酸素と反応し、金属表面は製造直後から自然発生的に酸化被膜で覆われています。熱間圧延工程(550℃以上)ではミルスケールと呼ばれる酸化鉄、冷間圧延工程(常温)では酸素・水などの存在下で水和酸化鉄の皮膜が生じます。これらの酸化鉄(錆)は脆弱な層であり、錆層が残ると塗膜との付着を著しく阻害します。また、錆層は水、塩化物イオン、硫化物イオンなどの腐食促進物を吸着しやすく、金属の腐食を促進します。一方、アルミニウムは酸素との親和性が強く表面に緻密な防食性の強い酸化被膜(白錆)を発生するが、やはり空気中の酸素や水を吸収し易く塗膜の付着性が弱くなります。

また、型材や板材の加工された被塗物となる金属は、複雑な熱履歴など加工される過程で表面の組成や結晶状態、夾雑元素の編析状態等が変化します。そのため表面は内部よりも表面エネルギーが大きく、異種物質を吸着したり反応し易くなります。成型加工前に潤滑・加工油塗布や錆発生防止のため加工油や防錆油が塗布され表面が汚染状態になります。

2.金属の塗装前処理・化成処理

リン酸塩処理は化成処理の代表的な方法の一つで、鉄鋼や亜鉛などの金属表面にリン酸亜鉛などの金属塩の薄い皮膜(ミクロンオーダー)を生成させるものです。リン酸亜鉛処理の他にリン酸鉄処理、リン酸カルシウム処理、リン酸マンガン処理等があります。

その工業的目的は、古くは道具、武器などの金属製品の錆防止でした。近年は、塗装下地として塗膜が剥離しにくくすること、塗膜に傷が付いても錆が広がらないようにすることを目的とし、自動車を始めとした工業製品に広く標準的な方法として採用されています。

なお、リン酸塩処理の標準的な工程は、
①金属表面の洗浄(アルカリ脱脂剤)→②水洗→③除錆→④水洗→⑤中和→⑥水洗→⑦表面調整→⑧処理(リン酸塩処理浴)→⑨水洗→⑩乾燥(熱温風)
で、スプレーまたは、浸漬法により実施されます。薬剤を使用するのは①、③、⑤、⑦、⑧の工程で、通常、処理効果促進のため加温されます。また、そこでの処理時間は1分未満から数分、場合によって10分以上かけることもあります。代表的には⑧の処理剤としてリン酸亜鉛処理剤が多く用いられ、出来上がった結晶が塗膜の付着と防錆性に寄与します。(「リン酸亜鉛処理の結晶」写真を参照)
リン酸塩処理後に、塗装目的の場合は電着塗装、下塗り溶剤塗装が同一ライン内で直ちになされ、更に引続き必要に応じて上塗り塗装まで実施されます。

リン酸亜鉛処理の結晶写真

塗料の知識